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■夏の滋養強壮に「夏の使者」アユ 木々が濃い緑に染まると「夏の使者」アユの季節になる。淡白な若アユの塩 焼きは、初夏ならではのごちそうだ。各地でアユ漁が解禁されており、太公望 はさぞや腕が鳴っていることだろう。 さて、天然アユ(海産アユ)はいまや希少な高級魚でなかなかお目にかかれ ないが、身が締まって「香魚」と呼ばれるほど香りがよい。キュウリともスイ カとも表現されるこの香りは、川の底石などについた珪藻類をたっぷりと食べ た証しだ。 養殖アユは魚粉の餌料で育ち運動不足な分、脂が多く身に滋味が足りないよ うな気がする。しかし最近は養殖技術が進歩して植物性の餌料で育てたり、出 荷前に河川水を入れた養殖場で運動させて脂を落とすなど、天然ものに近づけ る方法を編み出している。 天然アユと養殖アユでは栄養価も少し違っている。カルシウムやたんぱく質 の量は天然ものに軍配が上がり、低カロリーでもある。アユは昔から滋養強壮 の魚とされ、病気や夏バテの回復に効果があるといわれてきた。胃腸、筋肉、 骨を丈夫にするだけでなく、肝臓病や糖尿病によいとされている。高級珍味の うるか(はらわたや精巣、卵巣の塩辛)には強壮作用、整腸作用があるそうだ。 アユをおいしくいただくには、やはり塩焼きだろう。川面を跳ね上がった瞬 間のような姿に焼き上げた熱々を内臓ごとがぶりと頬張ばる、行儀は悪いがこ れが一番。味が繊細なのでご飯が進むおかずにはならないが、日本酒との相性 は抜群だ。 ところでアユ釣りといえば初夏の風物詩だが、水質悪化や堰(せき)が作ら れてかつての魚影が見られなくなった川も多い。とくにここ数年、東北・北陸 の日本海側では「激減」といえるほどの不漁が続いている(原因は不明)。 アユは各地に伝わる伝統漁法など地域の文化を生み出してきたし、優美な姿 から絵画や彫刻にも描かれてきた日本を代表する淡水魚だ。食文化の継承とい う点からも、アユの資源復活を祈りたいものだ。 [参考文献] 『体質改善・即効療法大事典』( 総監修・杉 靖三郎/健友館) |
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