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■「旅は食育!」―― 讃岐うどん編 ★夏の旅行シーズンがやってきた。旅の楽しみはというと人との出会い、そし て食との出会いではないだろうか。旅先で食べた美味・珍味は忘れがたいも のだ。食を通して、その地の気候風土や歴史、長く育まれた農民の英知が見 えてくる。まさに「旅は食育」だ。ツアーまで組まれるようになった香川県の 郷土食「讃岐うどん」にはどんな知恵が込められているのだろうか。 香川県は温暖な気候を生かして水田二毛作の裏作として小麦を育てていた土地 だ。そのため、小麦を原料とする醤油造りが盛んになった。さらに瀬戸内海では 塩を作り、イリコだしにするカタクチイワシを獲る。うどんは地域のさまざまな 産品を利用して生まれた米の代用食であり、貧困の象徴でもあった。 それは明治以降の讃岐農業の特徴にある。小作地が非常に多く、1892年(明治 25年)の比率は63.6%(全国平均は39.99%)で全国一。大正末期になっても小作農 家は48%もあった。米を作っても大半は小作料として地主に収めなければならず、 農民が米を食べられるのは盆と正月だけというありさまだった。 一方、大正末期になると麦年貢が廃止されたので、小作人は麦を作ればすべて 手元に残るようになる。当然、生産意欲は高まる。こうして小麦生産、とくに臼 でひく小麦の生産が本格化していく。小麦粉に塩と水を混ぜ合わせて打つうどん は、米を大切にする農村生活の倹約的な知恵として根付いていく。いまの讃岐う どんブームを遡っていくと、こんな讃岐の歴史の一端と農業の特質がみえてくる。 ところで香川出身の人で3食うどんでもよいという人がいるし、昼食はうどん に限るという人もいる。手打ちでしこしこしたうどんは、香川の郷土の味として 観光客も夢中になるおいしさだ。しかし原料の粉はというと、「色白」のオースト ラリア産の小麦が9割を占めてきた。香川産の小麦はちょっと「色黒」のうどんに なるので、家庭用ならともかく外食用としては敬遠されたからだ。 しかし2000年、香川農業試験場がうどん専用の小麦「さぬきの夢2000」という新 品種を発表した。現在、県内で5000tを超える収穫量がある。まさしく地産地消 の、香りがよく、こしが強い淡黄色の讃岐うどんが食べられるようになった。休 暇や仕事で香川県にいらっしゃるさいには、「かがわ農産物流通消費推進協議会」 が認証したうどん店(全9店)で味わってはいかがだろうか。 皆さんもうどんを食べながら、香川の歴史や農家の食の知恵、そして故郷の風 土から生まれた食を思い出していただきたいものだ。 [関連ページ] ●純讃岐産小麦のうどん店「さぬきの夢2000こだわり店」の紹介 http://www.pref.kagawa.jp/pubsys/cgi/contents_view.cgi?cd=16960 |
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