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■カキ(柿)の豆知識−清酒に渋を入れると透明に! ★この秋は旬の果物が手ごろな価格になっている。今年は本土に台風が一つも 上陸しなかったので豊作になったからだ。それならば、たっぷりと旬の恵みに 預かりたい。とくにカキは例年より15%も安くなっているという。そこで、穏 やかな甘みがおいしいカキの豆知識を紹介しよう。 奈良時代に中国から到来して野生化したカキ。最初は渋ガキだけだったが、 時がたつにつれて一部が甘ガキに変わり、鎌倉時代には甘ガキの栽培が行われ ていたらしい。鎌倉以前には渋ガキの熟しガキと干しガキを菓子として食べて いたが、その後は生の甘ガキも水菓子として食べるようになった。 カキは日本の気候の風土に適しており、栽培が全国的に広がっていったが、 販売用果樹として栽培されるようになったのは大正時代以降のことだ。現在、 北海道と沖縄以外で生産されているが、主産県は和歌山、福岡、奈良、岐阜、 福島、愛知。ただし、品質のよい甘ガキを生産するには高い秋の気温が欠かせ ないので、甘ガキに限れば東海以西の暖地の生産量が多くなっている。 ところで、渋ガキの皮をむいて乾燥させた干しガキには2種類あることをご 存じだろうか。水分が50%前後の半生のあんぽ柿と、水分が25〜30%とよく乾 燥させたころ柿だ。どちらにも表面に白い粉が付いているが、これは果肉のブ ドウ糖と果糖なので安心して食べていただきたい。 生果のカキは秋の味覚だが、意外なところでも活躍している。実は清酒(日 本酒)が透き通っているのは柿渋のおかげなのだ。絞りたての酒は濁っている が、柿渋のタンニンが濁りのもとになっているたんぱく質と結合して固まって 沈殿するからだ。この「滓(おり)下げ」の工程にたんぱく質分解酵素を使う 蔵もあるが、今でも昔通りに柿渋を使うところが多いそうだ。ちなみに、柿渋 を採取するために天王柿という専用種が栽培されている。 さて、カキの黄赤色は日本在来の木造建築によく映えるので、寺社や里山の 風景などをいっそう印象深くしてくれる。カキは味覚だけでなく、視覚にもよ い果物なのだ。 |
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