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■よく噛むと大脳の神経細胞が活発になる ★ 戦後、日本人の食生活が大きく変化し、噛まなくても喉を通ってしまうカレ ーやハンバーグなどが食卓に上るようになった。その結果、戦前には1回の食 事の咀嚼回数は1420回(食事時間22分)だったものが、現在では620回(食事時間 11分)にまで減ってしまったというのだ(斎藤滋・元神奈川歯科大学教授の調査)。 これは由々しき事態だ。なぜなら、咀嚼(そしゃく)は脳の働きを活性化して 認知症(痴呆症)や生活習慣病を予防する極めて重要な「生命システム」だから。 物を噛むと、こめかみとアゴの付け根の筋肉が動くが、じつはこの筋肉運動が 脳に血液を送っているのだ。だから、咀嚼すればするほど送る血液の量が増え て脳内の血流量も増加し、大脳の神経細胞の活動が活発になる。 また、咀嚼の運動刺激が脳の発達を促進して認知症を予防することもわかっ てきた。噛むと脳内の血液循環がよくなって、脳神経細胞に栄養と酸素が送ら れるので代謝機能が高まるのだという。年をとって歯の数が少なく噛めない人 ほど認知症になる割合が高いという報告もあり、やはり若い頃から噛む習慣を つけておきたいものだ。 さらに、肥満が原因のひとつになっている生活習慣病は、よく噛んでゆっく りと食べれば防ぐことができる。満腹中枢が働いて食べ過ぎを防ぐからだ。加 えて、時間をかけて噛むと食後の血糖値の上昇が緩やかになるので糖尿病予防 に効果がある。噛むことは予想外に運動量があることも大きな効用だ。食後に 汗をかくぐらいよく噛んでいればちょっとしたウォーキングに相当するぐらい の運動量にはなるそうだ。 そのほかにも、噛めば顔の筋肉のたるみ予防になるので美容にもよいし、唾 液がたくさん分泌されて消化吸収がよくなるだけでなく、歯周病や虫歯予防、 口臭防止になる。あごの筋肉を使うと血流がよくなって肩こり防止にもなると、 まさに良いよずくめ。 中年になると、喉越しを楽しむ豆腐や口の中でとろける脂肪で旨みを味わう 刺身などが恋しくなるが、これらは噛まないメニューの代表のようなものだ。 野菜のおひたしや繊維の多い野菜の煮物、歯ごたえのある海藻などを加えよう。 簡単に噛むメニューにするには、麦ご飯や玄米ご飯をおすすめしたい。 とにかく、意識的に噛む食事を続けることでしか噛む習慣づけはできない。 まずは1口ごとに噛む回数を数えながら10回、20回と増やしていき、最低30回 は噛めるようになろう。その頃には、噛む効用が実感できているだろう。 |
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