|
||
|
BACK目次 NEXT 目次 |
|
■コショウは「薬になるスパイス」 コショウは「スパイスの王様」だ。中世のヨーロッパでは肉の臭みを消した り防腐剤に使うなど、なくてはならないものだった。おまけに遠くインドから 運んだとあって大変貴重なものだったために、貨幣としても流通していたほど だ。役人の給料や地代、税金代わりにも使われていたというコショウ。大航海 時代以降、スパイス戦争が繰り返されたのもむべなるかな、である。 さて、コショウが日本に入ってきたのは奈良時代だった。高貴な人の薬とし て使われたが、今やラーメンや炒め料理に欠かせない庶民の香辛料となってい る。いくつか種類あるが、どれも製法が違うだけで同じものが原料だ。 黒は未熟な実を皮付きで天日乾燥させたもの、白は完熟した実を水につけて 皮をむいて乾燥させたもの。黒は香り成分を含んだ皮ごとひくために香りと辛 味が強いので肉料理や煮込み料理に、白は香りも辛味もマイルドなので魚料理 やクリーム煮などの白い料理に向く。 では、国内生産がない日本ではコショウをどこから、どのくらい輸入してい るのだろう。2003年には全体の65%(5600t)をマレーシアから、23%(2000t) をインドネシアから、残り12%(1000t)がその他の国からとなっている。コシ ョウは実をつけてから3年以上たたないと収穫できず、栽培には大量の水を必 要とする作物だ。ところが主産地の熱帯地方はエルニーニョによる干ばつの影 響で水不足が続いており、品質の安定は難しいようだ。 ところでコショウは昔々、薬だったと紹介したが現在でも「薬になるスパイ ス」として使われている。漢方医学では健胃、食欲増進、駆風(体内のガスを 出す)などに用いられている。また、爽やかな香りとピリッとした辛味が舌の 味蕾(ミライ)を刺激して薄味でも満足感が得られるようになるため、病院で は入院患者の減塩食に使っている。 戦後、急速に家庭に普及したコショウだが、洋食だけでなく和食にも意外に合 うのだ。しょう油、味噌、鰹だしや昆布だしとの相性もよいのでお試しを。 |
||