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■西洋梨で秋の味を先取り まだまだ暑い日が続くが、処暑も過ぎて暦の上ではもうとっくに秋。もうじ き稔りの季節を迎え、西洋梨がお目見えする。セザンヌの静物画に描かれてい る西洋梨を見て「ヒョウタンみたいなものは何だろう」と思った昭和30年代と は違い、いまではスーパーやくだもの店にも並ぶようになった。 しかし、購入してから室温での追熟が必要なために食べ頃の見極めが難しく、 独特の芳香と甘みが消費者に伝わりにくいという弱点を持っている。そのため か明治時代に日本に入ってきて100年も経つのに、秋の味覚としては脇役の感 がぬぐえない。 しかし、日本梨の爽やかな味覚とは違う、滑らかな舌触りと濃厚な甘みは他 の果物にはない「蠱惑(コワク)的」とでも言えそうな味わいがある。加えて、 果樹なのに樹上では完熟しないというかなりの変わり種でもある。木からもい で初めて成熟を始めるため、まだ青いうちに収穫して熟すのを待たなければな らない。 品種によっては8月下旬ごろから収穫が始まるが、2週間ほど低温貯蔵庫で 予冷したのち市場に出回ることになる。そして消費者の手に渡ってからの追熟 期間を経てやっと舌を楽しませるというわけだ。いうまでもなく、追熟がうま くいった西洋梨は「バターペアー(butter pear)」という別名通り、舌の上で まったりととろける。 最近は産地で追熟を完了させて出荷されるものも出てきており、以前に比較 すると西洋梨本来の味でほかの果物と勝負できるようになった。そのため個性 的な味で消費者を惹きつけてきており、ラ・フランスやル・レクチェといった 品種は贈答品としても人気が出ている。 色鮮やかな秋の果物に混じるとその外見はやや魅力に欠けるが(ちなみに、 日本一の産地・山形では「みだぐなす」<見てくれが良くないもの>と呼ばれ ている)、おいしさでは負けていない。カリウムや食物繊維が豊富で、健康機 能性が高い西洋梨で一足先に秋を味わってみては。 |
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