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■ポリフェノールの豊富なナス 気温が上昇するにつれて、露地ものの夏野菜が続々と店頭に並ぶようになっ た。夏野菜は種類も豊富で価格も安く、色合いも美しいので料理の楽しみが増 す。とくに濃紫(こむらさき)のナスは、光を跳ね返すほど艶のある肌を生か した炒め物や漬物、焼き物にすればその色まで、ご馳走になる。色の正体のナ スニンは抗酸化作用に優れたポリフェノールで老化抑制やがん予防に効果があ る。 ところでナスは今、野菜類のなかで珍しい存在となっている。品種改良で個 性が失われた作物が多いが、地方色が残る丸ナス、長ナス、米ナスなどの在来 種が約40も栽培されているからだ。今回はナスの地方品種を紹介しよう。 賀茂:京野菜の代表格の丸ナス。大型(直径8〜12cm)で肉がしまり、田楽や しぎ焼きに向く。京都では他府県産と差別化するために「京マーク」と呼ばれ るブランドシールを貼っている(ヘタは紫。似た形の米ナスのヘタは緑)。 仙台長:伊達政宗が「文禄の役」(1592)で朝鮮出兵した折に立ち寄った博多か ら持ち帰ったとされる。8〜10cmの細長い黒紫色のナスで漬物や煮物に向く。 泉州水なす:大阪南部・泉州地方の特産品。多汁で皮がやわらかく、手で握る と果肉から水が滴る。浅漬けに最適。栽培に多量の水を必要とするので、水ナ スの名がついたといわれている。 民田:芭蕉が「珍しや 山を出羽の 初なすび」と詠んだ小丸ナス。山形県鶴岡 市・民田地区の特産で重さは10〜20gほど。皮がやわらかく身がしまり、名物 の辛子漬けにされる。 ほかにも絹皮(愛媛)、佐土原(宮崎)、鉛筆(新潟)などがある。大長ナ スに人気のある九州を除き、全国的に長卵や中長型のF1品種(一代交配)の千 両2号が主流となっている。それだけに、地方品種は「お国自慢の味」として 長く残っていってほしいものだ。 |
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