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149 魚を焼くときは「海背川腹(うみせかわはら)」と
     言い伝えられる理由
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■魚を焼くときは「海背川腹(うみせかわはら)」 
  と言い伝えられる理由
魚が体によいことは知られているが、やはり手軽に作れるのは焼き魚だろう。
 生魚、干魚、その中間の一夜干魚の三種類があるが、どれも魚の持ち味が生
 かされて旨みが味わえる。ところが、おいしく見栄えよく焼くのは意外に難
 しいものだ。焼き方にコツはないのだろうか。

 
  昔から、開きや切り身の焼き方は「海背川腹(うみせかわはら)」と言い伝
えられている。「海の魚は背(皮)から焼き、川の魚は腹(身)から焼く」と
いう意味だ。地方によっては逆の言い伝えもあるが、それはその地方でおもに
食べる魚や魚の形、開き方に違いがあるからのようだ。では、どうして「海背
川腹」の焼き方がいいのだろうか。

 海の上のほうを回遊する青背の魚は脂肪分が多いものが多く、身にも水分が
多く含まれている。そのため、背皮を上にして焼くと余分な水分と脂肪分が流
れ出る。一方、川魚のように淡白なものは身から焼くと脂肪分が流れ出さずに
身に回り、具合良く焼ける。

 では、アジやイワシなどの小型の魚を丸ごと1匹焼くときにはどうか。見栄
えを考えて、盛り付けるときに表になるほうを先に三分(さんぶ)か四分焼き、
裏を七分か六分焼く(鮮度が落ちている場合は、必ず中心部まで充分に火を通
す)。白身魚は強火で皮に程よい焦げ目がついたら裏返し、中火にして火を通
し過ぎないように九分焼き程度にとどめよう。川魚の場合は、特有の生臭さを
消すためによく火を通すのがコツだ。

 さて、焼き魚はとくに焼き方でぐっと味が変わるものだ。それに加えて、振
り塩にどの銘柄のものを使うかで魚の味がずいぶん違うような気がする。私が
愛用しているのは、日本で唯一「揚げ浜式塩田」で作っている能登の塩だ。10
種類ほど試してたどり着いた塩だが、焼き魚の味の引き立て上手だ。魚の塩焼
きをもう少しおいしく食べたいと思っている方は、塩を変えてみるといいかも
しれない。全国には、ほかにも焼き魚に向いたおいしい塩がありそうだ。

 [参考文献]
 平野雅章『日本の食文化体系 4 食物諺集』東京書房社


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